心身の不調(適応障害・鬱病等)で休んでいる、あるいは休むことを考えている先生に向けて、休職の手続き・お金・復職までの流れを整理しました。後半では、休職のあとに教員を続けるか辞めるかを考えるときの材料もまとめています。
はじめにお伝えしたいことがあります。いま調子が悪い方は、この記事を読み込むより先に、医療機関を受診してください。この記事は制度と一般的な進め方の説明であって、医療的な助言ではありません。判断は、休んで落ち着いてからで間に合います。
ひとりで抱えているときは、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)など、職場以外の窓口も使えます。
この記事の制度部分は、文部科学省が公開している教職員向けの手引き「とまり木 ― 心の不調による病気休暇・病気休職中の手引き」と、公立学校共済組合・各自治体の規定にもとづいています。細部は自治体によって異なるので、最後は必ず所属の教育委員会・事務室で確認してください。
休むまでの流れ
公立学校の教員が心の不調で休むときは、おおむね次の順で進みます。手続きそのものは、思っているより短い期間で終わります。
- 受診して診断書をもらう|心療内科や精神科などを受診し、療養が必要である旨と期間が書かれた診断書を出してもらいます。初診は予約が取りにくいことが多いので、迷っている段階で押さえておくと選択肢が広がります
- 診断書を職場に提出する|病気休暇を取るには、主治医の診断書を職場に提出する必要があります。窓口は管理職です
- 病気休暇に入る|診断書に書かれた期間で休みます。期間内に回復しない場合は、診断書を再度提出することで延長できます
- 病気休職に切り替わる|病気休暇の上限に達しても療養が必要な場合、教育委員会から病気休職が発令されます。休職の開始時・更新時、そして復職時にも診断書が必要です
診断書を出す時点で、休む理由を細かく説明する必要はありません。引き継ぎについては、できる範囲で構いません。後任の手配は学校と教育委員会の仕事です。
私立学校の場合は、地方公務員の制度ではなく各校の就業規則によります。期間も給与の扱いも学校ごとに違うので、事務局に確認してください。
どのくらい休めるのか、給与はどうなるのか
公立学校の教員が病気休暇・病気休職で休める期間と、そのあいだの収入は、おおむね次のような構成になっています。
| 段階 | 期間 | 収入 |
|---|---|---|
| 病気休暇 | 最大90日間 | 給与は全額支給 |
| 病気休職(1年目) | 1年 | 給与の8割程度 |
| 病気休職(2年目以降) | 休職は最長3年間 | 無給。共済組合から給与の約3分の2 |
病気休暇を180日としている自治体もあります。日数も支給率も自治体の条例で決まっているので、必ず所属の教育委員会等で確認してください。
無給になったあとは、公立学校共済組合の傷病手当金が支えになります。給与のおよそ3分の2の額が、傷病手当金として通算1年6か月、そのあと傷病手当金附加金として6か月、合わせて最大2年間支給されます。請求は自動ではないので、共済組合の窓口で手続きが必要です。
ここで大事なのは、「すぐに辞めるか続けるかを決めなければならない」わけではないということです。制度上は、年単位で考える時間が用意されています。
見落としやすいお金の話
- 住民税と共済掛金|無給の期間も本人負担分は発生します。住民税は前年の所得をもとに計算されるので、収入がない年でも請求が来ます。給与から引けないぶん、振込などで納めることになります。ここを見落とすと、収入のない月に思わぬ出費が重なります
- 期末・勤勉手当(ボーナス)|休んでいた期間に応じて減額されます。満額は出ないものとして計画を立てたほうが安全です
- 退職手当|休職期間は、退職手当の計算で在職期間から一部(2分の1など)または全部が除かれることがあります。辞める時期を考えるなら、事務室で試算してもらうのが確実です
回復の経過と、復職までの流れ
文科省の手引きでは、回復の過程を次の4つの時期に分けて説明しています。
- 療養専念期|まず休むことに専念する時期。学校のことを考えられないのは普通です
- リハビリ期|生活リズムを戻し、少しずつ活動量を増やす時期
- 復職準備期|業務の負担に耐えられる状態に近づける時期。ここで後述の手続きが入ります
- 復職後、経過観察期|戻ってからも、しばらくは様子を見る時期
手引きが強調しているのは、回復は直線的ではなく一進一退であるということです。良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、波の幅が少しずつ小さくなっていきます。数日調子が悪い日があっても、後戻りしたわけではありません。
復職支援プログラム(試し出勤)
復職は「体調が戻ったので明日から」という形にはなりません。多くの自治体では、休職期間中に、原則として元の勤務校で復職支援プログラムを行います。「職場復帰訓練」「試し出勤」など、教育委員会によって名称も期間も異なります。
短時間の軽い作業から始めて、段階的にフルタイムへ移すのが原則です。手引きに載っているスケジュール例では、次のように進みます。
| 時期 | 時間 | 内容の例 |
|---|---|---|
| 1周目 | 始業〜3時間 | 机上整理、管理職面談、教材研究、日誌記入 |
| 2周目 | 始業〜給食後 | 授業参観、教材研究、管理職面談 |
| 3周目 | 始業〜15時 | T2授業、教材研究、給食指導、行事参加 |
| 4周目 | フルタイム | T1授業、単独授業、教材研究、職員会議 |
スケジュールは、本人・主治医・管理職・教育委員会の話し合いで決まります。無理だと感じたら、その場で言って構いません。
復職審査会
復職の前に、教育委員会で復職審査会が開かれることがあります(「健康審査会」「健康対策委員会」など名称は自治体により異なります)。本人・管理職のほか、場合によっては家族の出席を求められることもあります。
ここは緊張する場面ですが、手引きには「復職できるかどうかを一方的に判断する場ではなく、心身の状態や復職後の留意点を関係者で共有し、安心して復職できるような方策を確認する機会」と書かれています。配慮してほしいことがあれば、この場で伝えておくと復職後が楽になります。
休職の期間が満了しそうなとき
病気休職は、公務員としての身分を保ったまま勤務を離れる分限処分の一種です。そのため、期間の上限(多くの自治体で3年)まで休んでも復職が難しい場合は、地方公務員法第28条第1項第2号にもとづいて分限免職となることがあります。
ただし、これは自動的に決まるものではありません。あらかじめ指定医師の診断を受けることが必要とされており、処分に納得できない場合は人事委員会・公平委員会への審査請求もできます。
期限が近づいたときに選べる道は、おおむね次の3つです。
- 復職を目指す|配慮つきの復職や、異動をあわせて相談する
- 自分から退職する|退職手当の扱いが分限免職の場合と変わることがあるため、事務室で両方を試算してもらってから決める
- 学校の外で働き方を変える|次の章以降で扱います
いずれにしても、期限が近づいてから慌てて決めるより、余裕のあるうちに事務室で数字を出してもらうことが、いちばん後悔の少ない進め方です。
退職・転職を考えるときに知っておくこと
まず、判断の時期についてです。文科省の手引きは療養中の過ごし方として、「重大な決断(退職や離婚など)は保留するようにする」とはっきり書いています。「仕事ができない自分は退職したほうがよい」という考えは、不調による一時的な症状であることがほとんどだからです。決めるのは、判断できる状態に戻ってからで間に合います。
公立学校の教員に失業給付は出ません
ここは誤解の多いところです。公立学校の教員は公務員なので、雇用保険の適用除外です。退職しても、いわゆる失業給付(基本手当)は受けられません。
代わりに「失業者の退職手当」という制度があり、受け取った退職手当が失業給付の総額に満たない場合に、その差額が支給される仕組みになっています。ただし、退職手当が一定額を超えていれば支給されません。「辞めても失業手当でつなげる」という前提で計画を立てないでください。私立学校の教員は雇用保険に加入しているため、この点は事情が異なります。
また、傷病手当金は退職後も、条件を満たせば継続して受けられる場合があります。辞める前に共済組合の窓口で確認しておくと、収入の見通しが立てやすくなります。
休職中に転職活動をしていいのか
制度としては、療養に専念することが休職の前提です。休職中に本格的な転職活動をすることは、その趣旨から外れます。一方で、「回復してきたので、復職せずに次を探したい」という段階に入る人はいます。その場合の進め方は、大きく2つです。
- 復職してから動く:在職のまま活動できるので収入が途切れません。ただし復職直後は負荷が高く、活動と両立しにくい時期でもあります
- 退職してから動く:時間は作れますが、収入が止まります。前述のとおり失業給付は当てにできないので、貯蓄と傷病手当金で何か月持つかを先に数えてください
面接で休職をどう伝えるか
不安が大きいのがここだと思います。前提として、病歴は本来、応募者が自発的に述べる必要のない情報です。職業安定法の指針でも、業務の目的の達成に必要な範囲を超えた個人情報の収集は原則として認められていません。
ただし現実には、職歴の空白期間について聞かれることはあります。そのときに使いやすいのは、次の3つを短く述べて、話を前に進める形です。
- 体調を崩して休養していた期間があること(病名まで言う必要はありません)
- 現在は回復していて、就業に支障がないこと
- 同じことを繰り返さないために、働き方について何を条件にしているか
3つ目が大事です。「もう大丈夫です」とだけ答えるより、「勤務時間が把握できる環境を条件にしている」「持ち帰りの発生しない仕事を選んでいる」と条件の形で話せると、相手も判断しやすくなります。
働き方を変えると、何が変わるのか
掲載している教員の転職事例229件では、残業時間が平均で月40.0時間減っています。年収は平均で561万円から537万円へ変わっており、下がる人のほうが多数派です。
体調を理由に動く場合、この「年収は下がるが時間は戻る」という交換が、そのまま療養の条件になります。事務・バックオフィスや学校事務のように、年収の下げ幅が大きい代わりに勤務時間が読める職種が選ばれやすいのはそのためです。
事務・バックオフィスへ転職した事例や学校事務・学校法人職員へ転職した事例では、転職後の残業時間と、そこに至るまでの活動期間を1件ずつ確認できます。
よくある質問
休むのに、どのくらい前から準備が必要ですか?
制度上は、診断書が出れば手続きは進みます。準備期間は必要ありません。むしろ「引き継ぎを終えてから」と考えて先延ばしにするほど動けなくなることが多いです。受診の予約が取りにくい時期もあるので、迷っている段階で医療機関だけ押さえておくと選択肢が広がります。
休職すると、周りに知られてしまいますか?
休んでいること自体は勤務の事実なので、同僚には分かります。ただし病名や診断の内容まで共有する義務はありません。どこまで伝えるかは自分で決められるので、管理職に「病名は伏せてほしい」と申し出て構いません。
復職したら、元の担任や部活に戻ることになりますか?
担任を外す、部活動の顧問を外す、持ち時数を減らすといった配慮が行われることがあります。ただし自分から申し出ないと付かないことが多いので、復職支援プログラムや復職審査会の場で、何が負担になりやすいかを具体的に伝えておくことをおすすめします。
休職したことがあると、転職で不利になりますか?
職歴の空白について説明を求められることはありますが、それだけで選考から外れるとは限りません。回復していること、同じ状況を繰り返さないための条件が自分の中で整理できていることが伝われば、話は前に進みます。
休職のまま退職することはできますか?
できます。復職してから辞めなければならない決まりはありません。ただし退職手当や傷病手当金の扱いが、辞める時期によって変わります。金額を試算してもらってから決めることをおすすめします。あわせて、判断力が落ちている時期の決断は後悔につながりやすいので、主治医に相談したうえで進めてください。
復職してから転職するのと、退職してから探すのは、どちらがいいですか?
収入が続く点では復職してからが有利です。掲載事例でも、在職のまま活動した人のほうが多数を占めます。ただし復職直後は業務の負荷が高く、活動の時間を作りにくいのも事実です。公立学校の教員には失業給付がないぶん、退職してから探す場合は貯蓄の見積もりをより慎重にしてください。
参考にした資料
- 文部科学省「とまり木 教職員のみなさまへ 心の不調による病気休暇・病気休職中の手引き」(病気休暇・病気休職の期間と給与、回復の4段階、復職支援プログラム、復職審査会)
- 公立学校共済組合「傷病手当金/傷病手当金附加金」(支給額・支給期間)
- 地方公務員法第28条(分限処分)
- 雇用保険法第6条(適用除外)、国家公務員退職手当法にもとづく失業者の退職手当
この記事は制度と一般的な進め方をまとめたもので、医療的な助言ではありません。制度の細部は自治体の条例や学校の就業規則によって異なります。体調や手続きについては、必ず主治医と所属の担当窓口にご確認ください。
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